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×2020年4月→改め2021年3月よりJOCVとしてケニアへ。いろいろ情報発信ができるといいな

ケニアの民族とか言語について

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ノートがお洒落です

キクユ語を少し覚えようとしています。
wĩmwega(ウェムウェガ):Hello!
ũhana atĩa?(オハナアテア):How are you?
Nĩ atĩa?(ネアテア):How are you?
ndĩmwega(ンデムウェガ):I'm fine.

キクユ語は、ケニア中部に住む民族であるキクユ人によって話される言語です。
言語系統的には、スワヒリ語と同じバントゥー諸語に属する言語なので似てるかな?と思ったらあいさつからして全然違うので軽くショックを受けています。覚えるの大変そう...

スワヒリ語だったら、こんな感じですからね。
Jambo! (ジャンボ!):Hello!
Habari yako?(ハバリヤコ):How are you?
Habari gani?(ハバリガニ):How are you?
Nzuri sana.(ンズリサナ):I'm fine.

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初代大統領ジョモ・ケニヤッタや、その息子で現大統領のウフル・ケニヤッタはキクユ人です。キクユ人はケニア最大の民族で、人口の約17%を占めます。

先週は、『ケニアの「国民」と「民族」』と題してブログを書こうとしていたのですが、途中からどんどんと『ケニアのような旧植民地で、欧米や日本のような形での国民国家(Nation-state)の成立が難しい国家において、「nation」と「tribe」という概念の持つ意味を論じる...』みたいな袋小路へと迷い込み、力尽きておりました(そんなブログ、どこにニーズがあるんだ...)。

今週は、それをもう少しライトにして書いてみようと思ったんですが、結局それなりにめんどくさい内容になりました。
めんどくさいのが好きな人はお読みください...

 

先ほど「キクユ語」に触れましたが、ケニアには60以上の言語があるそうです。ということは、国内に60以上の「民族」が存在するということです(※1)
帝国主義諸国の植民地だった地域は、植民地時代に宗主国同士の都合で国境線を引かれているので、一国の中に多数の民族が含まれるのが普通です。日本人の感覚的には理解しがたいですが(※2)。

そういった「民族」にも大きく分けていくつかのグループがあります。
・バントゥー系:サブサハラ・アフリカの多くの国で多数派を占める農耕民系の人々。前述のキクユ人はこのグループに属します。他にも、ケニア国内にはルヒャ人やカンバ人などの民族がいます。ケニア人口の約6割を占める多数派です。
・ナイロート系:アフリカ大湖沼地域(※3)のほか、スーダンエチオピアに多く住む人々です。元々は牧畜民であったそうです。ケニアには、有名なマサイ人のほか、多くの陸上長距離選手を輩出しているカレンジン人や、バラク・オバマの父親の出身民族として知られるルオ人などの民族がいます。人口の約3割を占めます。
・クシ系:北東部の乾燥地帯に住む牧畜系の人々。ソマリ人などの民族がいます。
・その他:アラブ系(ムスリムはアフリカ系でない人が多い印象)、ヨーロッパ系・インド系(植民地時代の名残ですね)が少数いるほか、00年代以降、多くの中国人がケニアに居住しています。

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参考資料にしたケニアセカンダリースクール(高校)の地図帳。

バントゥー/ナイロート/クシそれぞれの言語分布がわかりやすい。

私はあえて「民族」という言葉を使いましたが、ケニア人と話していると「tribe(部族)」という言葉を使うようです。
キクユ人というtribeは、mother tongue(母語)としてキクユ語を話します。それ以外のtribeもそれぞれの母語を話します。
一方、ケニア公用語(≒母国語)は英語とスワヒリ語です。なので、ちゃんと学校に通えたケニア人は、母語スワヒリ語+英語を話すトライリンガルになります(※4)。
しかもそこに「Sheng(シェン)」というケニア独特の言葉が加わります。これは、スワヒリ語と英語がミックスされた言葉で、スワヒリ語の一方言のようなものです。ちょっとYouTubeで紹介してる動画を見たのですが、単語からして訓練所で勉強したスワヒリ語のとぜんぜん違うので、ひっくり返りそうになりました。恐ろしい...
そんなわけでケニアという国は、かなりマルチリンガルな環境だと言えます。


英語があやしい人にはしばしば遭遇しますが(自分のことを棚に上げてw)、それでも大概の人は話せます。小学生でもけっこうしゃべれますからね。
ただ、ケニア人同士で英語で会話する場面にはなかなか遭遇しませんね。役人同士のお堅い会話とか、そんな場面でないとお目にかかりません。堅さレベルを比較すると、英語>スワヒリ語>民族語という印象です。英語は本当にエリートの言葉という雰囲気です。政府の公文書なんかもすべて英語のようなので、たぶん英語ができないと公務員にはなれないのではと思います。
一方、民族語は母語なので、本当にくだけた会話で使われている印象です。スワヒリ語はその中間に位置する感じですね。
言葉が混ざることもしばしば。キクユ語やスワヒリ語で話してる途中で英語が挟まってくるのは普通ですし、英語で話し合ってると思ったら急にスワヒリ語に切り替わったり。テレビでインタビューされてる人でもそういうのがあったりしますしね。

 

英語はいまいちだし、スワヒリ語はちっとも上達しないし、そのうえキクユ語まで覚えていく必要があるとは。
もうケニアに着いてから3ヶ月が経ちました。残すところ1年と9ヶ月です。やるべきこととやりたいことはたくさんありますが、長いようで短い隊員生活です。
だんだんと活動でやるべきことが見えてきた感じがします。活動についても、可能な範囲で伝えていくことができればと思っています。

 

(※1)「民族」という概念は複合的な要素からなるもので、あまり軽々しく扱うべき概念ではないです。今回のブログでは、「同じ母語を話す人々の集団」くらいの意味で書いています。

(※2)このことは、日本国内に「様々な民族が存在しない」ということを意味しません。日本の場合は「そういうお約束」になっているのだと考えてください。この「お約束」のことを「国民国家主義(Nationalism)」と呼びます(これを深堀りしようとするとまた袋小路にはまるので、やめておきます...)

(※3)アフリカ大陸の東部の大地溝帯に沿って、ヴィクトリア湖タンガニーカ湖をはじめとする大小多くの湖が存在する地域です。ケニアだと、ヴィクトリア湖のほかにトゥルカナ湖などがあります。

(※4)スワヒリ語母語の人もいるので、その人たちはバイリンガルですね。